白
開いた本のアイコン 白 ◉「色 その再現の意味」 [09.11.11(水)]
人はなぜ、色の魅力のとりこになるのでしょうか?
白

現代、私たちの身の回りには様々な「色」に囲まれた生活が当たり前になっていますが、昔は色材自体が大変な貴重品として扱われてきました。

生まれおちて最初に赤ちゃんが認識する色は赤と言われるように、人類にかかわりの深い「赤」から色材の歴史を見てみました。

「赤」は鉄が多く含まれる赤土、中でも朱、赤、黄色などのオーカー土から採取されていました。 これらが多く産出された地域はフランス・ドルドーニュ川やロット川近辺などで、ラスコーでは、紀元前1万5千年のものとされる洞窟 壁画も見つかりました。人類が赤色を使用した最古の例は、35万年前。人体装飾、また遺骨にもオーカー土で赤く彩色したことがわかっています。 スペインのアルタミラ洞窟ではヘマタイトの「赤」が使われています。 そういえばヘマタイト(Fe2O3 酸化鉄の一種「ギリシア語=血の意味」)の鑑別方法に、石にすりつけ、レッド・ブラウンの条痕を見る方法があります。実際、不透明で黒色、しかも金属光沢をもつ鉱物・ヘマタイトで、赤茶色の線が「描けた」時、不思議な感じがしました。 文字の文化が発達していなかった古代の人も、自然とともに生活する中から、有色土や岩石から「色」ができる事を知り、抽出方法を工夫し、手にした「色」。それがやがて富をもたらすものとなった時、色そのものが「宝石」となったのでしょう。

青色鉱物はラピスラズリ(Na8(Al6Si6O24)S2)に代表されますが、その希少性と製造の困難さゆえか、この色を愛した古代エジプト人は紀元前3000年紀には「人工青色顔料」を開発しています。 エジプト・ツタンカーメンの墓から出土したペンダントには、「色」としてトルコ石、ラピスラズリ、マラカイト、カーネリアン、金が、混ざらないように配置されているのは、色に宗教的(呪術的)意味を持たせているからだそうです。 中世ヨーロッパでも15世紀に入っても混色の記録はなく、色は「神」からの賜り物、よって混色は神への冒涜と考えられていました。

宝石は希少性の高さと美しさだけではなく「永遠の色」であり、「色は神からの賜りもの」であるから、神は色で表され、その守護を得られるもの、として扱われてきたことが伺えます。最初に色ありき、だったのでしょう。
それ以上に、エジプトのファラオが愛したのは「金」。

その精製方法を記すヒエログリフが、貴重な赤や青の色材を使って記されているのを見ると「金」が太陽神そのものを表し、それを身につけることは護符以上の意味、死後の再生をも意味したでしょう。 現在の色材の豊かさは、中世ヨーロッパに起こった錬金術の功績に因るものです。 アリストテレスの四元素論を元に万物の根源である「火」「水」「土」「空気」を融合し、卑金属を金にする賢者の石を作りだしたり、人の命も永らえようと研究され続けているものです(おそらく現在も)。 錬金術で培われた知識や、道具類が化学発展の基になっているのですから、大量に出回る色材を気軽に手にできるのも、言わば錬金術師たちのおかげと言ってもいいでしょう。 錬金術の歴史を改めて、ざっと追うと、元々、金の精製に長けた紀元前の古代エジプトからギリシャ、アラビアに伝わったようです。中国ではそれ以前に不老長寿の薬が研究されていた記録があり、当時、交易があったインドから錬金術が伝わったものとされる節もあります。仏教の聖典「華厳経」が中国語に翻訳されたのが3~4世紀ごろ、その中に水銀の薬効や長寿の霊薬に関する記述があり、そこには赤色を作りだす辰砂(Cinnabar)が多く使用された記録があります。その配合や実験に関わったのが聖典を訳した仏教僧であり、インド大乗仏教、特に密教と関わりのあった高名な錬金術師もいたことから、空海も関心を持っていたとの説もあります。
どの時代でも「赤」にこだわるのは、命の源である血液にできるだけ近い色を自然界で探した結果でしょう。

シナバル、といえば、以前テレビで取り上げられたイエメン、ソコトラ島の「竜血樹(ドラセナ・シナバル。リュウゼツラン科ドラセナ属)」。
赤い樹脂に炎症止の効果があり、ローマ帝国、古代中国では止血剤として使われていた記録があるそうです。赤い樹脂に止血効果があるのは偶然か、また自然の理なのでしょうか。 紀元前200年ごろ、世界市場となったアレクサンドリア。近隣アラブ諸国の商人たちが絹を求めて中国を訪れた時、卑金属を金に変えたり、若返りの草薬を売る「大道薬剤師」に出遇った事で、中国錬金術がアレクサンドリアに伝達されたきっかけとされています。
(引用文献 東方出版「インド錬金術」佐藤任・小森田精子訳・著)

インド伝承医学のアーユルヴェーダは、仏教成立以前に基本的体系が形成されていた事を考えるなら、錬金術の素はインドにあるのでしょうか。 古代から「色」は生活、命そのものに関わる大切なものであったのです。その基本ともいえる「赤」、嫌いな人はいないはず。

ですが、見る人の嗜好により「嫌い」な色であることも考えられるし、文化的背景、流行にも左右されます。現代では色を誰でも自由に楽しめますが、人が目で見てリラックスする色、活動的になる色は、機能として太古から受け継がれた記憶に刷りこまれていると考えられています。 色彩心理の研究は、たった100年程にすぎません。食べ物の嗜好からかかりやすい病気がわかるように、色の嗜好から性格が、性格から、かかりやすい病気も予測がつくのかもしれません。
カラーセラピーは古代インド・ヒンドゥーの教えや、現代色彩心理まで融合された古くて新しい英知であり「心」へのプレゼントだとも思うのです。

参考文献
「色彩-色材の文化史 フランソワ・ドラマール、ベルナール・ギノー著 創元社」 「色で読む中世ヨーロッパ 徳井淑子 講談社選書メチエ」

□このウィンドウを閉じる

カラーセラピー&カウンセリング/カラットオブカラーズ/フッター
カラット・オブ・カラーズホームページトップへ